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カナダと日本:2026年に向けて
イアン・マッケイ駐日カナダ大使よりご挨拶
2026年を迎えるにあたり、カナダと日本のパートナーシップは重要な転機を迎えています。この1年で両国の友情と協力は着実に深化しましたが、地政学的変化や技術革新が進む国際環境の 中で、両国が今後どのように連携し対応していくかが問われる年となります。
インド太平洋地域はカナダの将来にとって重要であり、世界第4位の経済大国である日本は、その取り組みを支える礎となっています。両国間の貿易額は年間360億ドルを超え、日本はカナダにとって第4位の外国投資国でもあります。しかし重要なのは、その規模以上に、関係をどのように深化・多様化させていくかです。
両国は相互補完的な強みを生かし、エネルギー、食料、重要鉱物、先端技術分野で、より強靭で信頼性の高いパートナーシップを築いてきました。今後は水素、原子力、カーボンキャプチャー、LNG・LPG分野での協力を拡大し、気候変動対策とエネルギー移行、持続的成長を支え合っていきます。
創立50周年を迎えたCCCJは、加日ビジネスの促進、政策対話、ネットワーキングを通じて経済関係を支えてきました。会員の皆様の継続的な尽力に感謝するとともに、インド太平洋地域における 加日の協力が、今後も実りある成果へとつながっていくことを期待しています。
コストコジャパン成功の軌跡 ー ケン・テリオ氏の功績
カナダと日本の経済交流が深化する中、この四半世紀において最も顕著な功績を残した カナダ人ビジネスリーダーの一人が、コストコジャパン前カントリーマネージャーのケン・テリオ 氏である。1999年、福岡近郊に日本初のコストコ倉庫店を開業して以来、約30年にわたり事業拡大を主導し、日本全国に37店舗を展開するまでに同社を成長させた。2025年には在職30年をもって退任。CCCJはその功績を称え、初代「ビジネス・レガシー・アワード」を授与した。
日本進出当初、年会費制と大量販売を特徴とするコストコのビジネスモデルは、日本の市場には適さないと見られていた。実際に多くの 外資系小売大手が撤退を余儀なくされる中、コストコは独自の価値を提供し続け、着実な 成長を遂げた。2025年には37店舗目を開業。開店当日の早朝から現場に立ち会うテリオ氏の姿は、現場主義を貫く彼の経営哲学を象徴 している。
テリオ氏は全国の倉庫店や物流拠点を頻繁に訪れ、従業員一人ひとりと向き合ってきた。その姿勢は組織文化として深く根づき、「この会社のDNAはケンそのもの」と評されるほどである。
サスカチュワン州の小さな町で育ったテリオ氏は、若くして小売業の現場で頭角を現し、プライスクラブを経てコストコへ入社した。1997年、創業者ジム・シネガル氏から日本進出を打診 され、即座に挑戦を決意したという。情熱と
誠実さをもって加日ビジネスの架け橋となったテリオ氏の歩みは、コストコジャパンの成功の物語であると同時に、加日経済関係の深化を象徴する物語でもある。
追悼:ウィルフ・ウェイクリー氏
ウィルフ・ウェイクリー氏(1950‒2021)は、CCCJの「第2の四半世紀」を力強く牽引した中核的人物であり、その歩みは加日関係の深化そのものを体現している。1975年のCCCJ設立当時、彼はすでに万博カナダ館ホスト、テレビ出演のコメディアン、外交官、弁護士として日本社会に深く根を下ろしていた。2021年に病のため逝去したが、そのレガシーは今もCCCJと加日コミュニティに生き続けている。
バンクーバー生まれのウェイクリー氏は、1965年の学生交流をきっかけに日本と出会い、1970年の大阪万博を機に関西に拠点を置くことになる。関西弁を含む高度な日本語力と人間的な魅力により、多方面で信頼を築いた後、法学を修め、1984年から87年にかけて在日カナダ大使館一等書記官を務めた。とりわけ官民連携による大使館再整備は、日本におけるカナダの確固たる存在感を象徴する成果として評価されている。
ウェイクリー氏は何十年ものあいだ CCCJの「鼓動」となり、かつては静かな社交クラブであった会議所を、経済・政策・文化を結ぶ ダイナミックな拠点へと変貌させた。2011年から15年に会頭を務めた際、停滞期にあったCCCJに再生の機会と使命を見出し、政策提言力と発信力を強化。会員数は300名を超え、33業種に広がる多様なネットワークを形成 するに至っている。
特に、EPAやTPPに向けた政策提言に おいてCCCJを中心的な存在へと押し上げ、研究基金の設立や政府への働きかけを主導 した功績は大きい。これによりCCCJは貿易 政策における信頼ある発言者となり、その努力は2018年のTPP発効へと結実した。
また、ウェイクリー氏は人と人を結ぶことに情熱を注ぎ、若者交流、次世代育成、文化事業、人道支援にも尽力した。PPPモデルの普及、災害支援、家族再会支援など、その 行動範囲は広く、「開かれたCCCJ」を実現 する改革も断行した。情熱、先見性、そして人への深い敬意――それがウェイクリー氏のリーダーシップであった。そのビジョンと精神は、今なおCCCJと加日関係の礎として受け継がれている。
ゴールデン・メープルリーフ・ガラ
CCCJ創立50周年を記念する「ゴールデン・メープルリーフ・ガラ」が、2025年11月14日、新たに開業したフェアモント東京にて開催 された。1980年代以来、同ガラはカナダ系 ビジネスコミュニティのメンバー、そのパートナー、友人たちを一堂に集める中核的な催しとなっている。優雅な装い、上質な料理とエンターテインメントを通じ、人々が交流を深める場として 親しまれてきた。
今年は220名を超える来場者を迎え、43階ラウンジでのプレ・レセプションには40社以上のスポンサーや来賓が集った。会場のフェアモントホテルは、多くのカナダ人にとって縁の深い ブランドであり、洗練された空間と壮大な眺望が、節目にふさわしい華やぎを演出した。
晩餐では、B.C.産サーモンやアルバータ産サーロインをはじめとするカナダ産食材を用いた5品のフルコースと厳選されたワインが供
され、食を通じてカナダの魅力を再確認する 機会となった。会場には、イアン・マッケイ駐日カナダ大使をはじめ、歴代大使、州政府代表、日本およびカナダの財界を代表する要人が顔を揃えた。
エンターテインメントも充実し、ジャズシンガーのhisaka、マジシャンのアツシオノ、DJシルバーフォックスによる多彩なパフォーマンスが、世代や立場を超えた一体感を生み出した。さらに、CCCJ初の「ビジネス・レガシー賞」が、コストコ・ジャパンを37店舗規模へと成長 させたケン・テリオ氏に授与された。
多くのスポンサー、運営チーム、若手ボランティアの献身によって支えられた本ガラは、CCCJの50年にわたる歩みを振り返ると 同時に、次の半世紀に向けた結束と展望を 共有する場となった。まさに記憶に残る一夜 であった。
CCCJ創立50周年 ― マーク・ボルデュック会頭よりメッセージ
CCCJは2025年に創立50周年という大きな節目を迎えました。1975年の設立以来、CCCJは加日ビジネスにおける礎として発展し、両国の協働と繁栄を支えてきました。本年は、新設された関西委員会の支援のもと、大阪・関西万博関連事業への参加をはじめ、インド太平洋地域の商工会議所との連携、ネット・ゼロやダイバーシティ分野での取り組みなど、多くの成果を上げました。周年行事のハイライトとなったゴールデン・メープルリーフ・ガラは、CCCJの歩みを称えると同時に、会員とともに次の50年を築いていくという明確な意思を 示す場となりました。
効果的なコミュニケーションに関する専門家の助言
ビジネスや公共分野でリーダーを目指す者にとって、効果的なコミュニケーションと傾聴力は不可欠である。10月22日のCCCJイベントでは、カナダ人エグゼクティブ2名が、異文化理解および簡潔かつ誠実な発信が、リーダーシップとキャリア成長を支える重要な要素で あることを実体験から語った。