In summary – Japanese summary of this month’s main features

AltaGas:日本向けプロパン
供給を支えるカナダ西海岸ルート

カナダは近年、太平洋岸を通じたエネルギー輸出を着実に拡大している。カルガリーに本社を置くAltaGasは、2019年からブリティッシュコロンビア州プリンスルパート港を経由して日本向けプロパン輸出を開始し、アジア市場への供給を強化してきた。

2025年には新たな大型LPG運搬船が就航し、輸送能力がさらに向上した。AltaGasの輸出拠点であるプリンスルパート港は、アルバータ州など西カナダのエネルギー資源を鉄道で集約しアジアへ積み出す重要な玄関口であり、東京湾まで約10.5日という航海日数を実現している。これはヒューストンや中東からの輸送よりも大幅に短く、パナマ運河やホルムズ海峡といった混雑や地政学的リスクの高い航路を避けられることも大きな利点である。

こうした地理的優位性から、カナダ産プロパンは日本をはじめアジア各国にとって重要な
エネルギー供給源となっており、AltaGasは加日間のエネルギー協力を支える存在として注目されている。

国交100周年に向けて

― 沼田貞昭元駐カナダ大使寄稿 ―

2028年、日本とカナダは外交関係樹立100周年を迎える。私にとっても特別な意味を持つ節目である。1974年、私は田中角栄首相がオタワでピエール・トルドー首相と会談した際に通訳を務めた。当時カナダはアジアとの関係強化を模索しており、国連平和維持活動などを通じて国際社会で重要な役割を果たすカナダに日本は敬意を抱いていた。

その後、私が駐カナダ大使を務めた2004年頃には、日加関係を描くキャンバスは大きく
広がっていた。私が重視していたのは、カナダが資源を輸出し、日本が工業製品を輸出するという従来型の「貿易補完関係」から両国関係を発展させることであった。自由貿易協定構想はその後TPP交渉へと発展し、最終的にはCPTPPの成立につながった。

沼田貞昭元

CPTPP発効後、日加貿易は大きく成長した。農産物、水産物、林産物の輸出拡大に加え、自動車分野でも交流が活発化し、両国関係はより多面的でダイナミックなものへと変化している。

一方で、現在の国際環境は大きく変化している。カーニー首相はダボス会議において、冷戦後の国際秩序が揺らぎつつあることへの懸念を示し、カナダのような「ミドルパワー」が連携して対応する必要性を訴えた。私は、日本もまた日米同盟を維持しながら、価値観を共有する国々との協力を強化することで、ミドルパワーとして重要な役割を果たせると考えている。

2026年3月のカーニー首相訪日に合わせて発表された包括的戦略的パートナーシップ文書では、安全保障分野での協力強化が大きな柱として掲げられた。共同訓練、防衛装備・技術協力、情報共有などを通じて、カナダは英国やオーストラリアと並ぶ日本の「準同盟国」としての存在感を高めている。さらに海洋安全保障やサイバーセキュリティ分野でも連携が進んでいる。

またエネルギー分野での重要性も増している。カナダ産LNGやLPGの対日輸出に加え、小型モジュール炉(SMR)、重要鉱物、バッテリー供給網などの分野で新たな協力が進んでいる。重要鉱物をめぐる国際競争が激化する中、カナダは日本の供給網強靭化を支える
重要なパートナーとなりつつある。

一方、日本の自動車メーカーは、中国製EVの受け入れ拡大や、米国・メキシコ・カナダ協定(CUSMA)の見直し動向にも強い関心を寄せている。こうした課題はあるが、私は
日加両国が共通の価値観と利益を基盤に協力を深めることで、国交100周年に向けてさらに豊かな関係を築いていけると確信している。未来を描くキャンバスはまだ完成しておらず、その可能性は今後も広がり続けるだろう。

サスカチュワンの少年は、なぜ日本の政治家になったのか

― ジョン・ヘイズ茨城県議会議員寄稿 ―

私はカナダ・サスカチュワン州の小さな農村で育った。高校卒業後はヨーロッパ各地を旅し、レジャイナ大学で学んだ後、1991年にワーキングホリデービザで来日した。当時は円高が進み、多くのカナダ人が英語教師として日本を目指していた時代だった。

ジョン・ヘイズ

その後、英語教師を経て茨城県つくば市に定住し、外国人向けバーを経営した。しかし2002年の飲酒運転規制強化によって経営は大きな打撃を受け、最終的に閉店を余儀なく
された。この経験を通じて地域社会への関心が深まり、日本語力の向上と日本国籍の取得を目指した。

2007年に帰化した私は地方政治への挑戦を決意した。日本の地方選挙は知名度が重要であり、バー経営や英語教育を通じて築いた人脈が大きな支えとなった。2008年のつくば市議会議員選挙では4000票を獲得し、市初の外国生まれの市議会議員となった。その後も連続して上位当選を果たしている。

2014年には県議会議員選挙で惜しくも落選したが、挑戦を続け、2022年には日本初の
外国生まれの県議会議員に選出された。現在は地域住民の声を行政へ届ける役割を担っている。

私は、日本の政治家は特別な存在ではなく、市民に奉仕するために選ばれた普通の人々だと考えている。サスカチュワンの小さな農村から始まった私の人生が、日本の地方政治につながったことを今でも不思議に感じている。

AIマネジメント・フォーラム

― AIがもたらす可能性とリスクを考える ―

3月23日、CCCJと西村あさひ法律事務所は「AIマネジメント・フォーラム」を共催し、日本とカナダにおけるAIの将来について多角的な議論を行った。開会にあたり、小須田明子氏は、ジェフリー・ヒントン氏やヨシュア・ベンジオ氏らの研究を挙げ、カナダがAI研究の先駆的存在であることを紹介した。

JPiX CEOの冨山和彦氏は、AIを蒸気機関の登場に匹敵する産業革命だと位置づけた。多くの国が雇用喪失を懸念する一方、日本は人口減少と高齢化による労働力不足に直面しており、AIはその解決策となり得ると指摘した。また、企業や社会が変化を受け入れなければ、コダックのように時代の転換点を見誤る危険があると警鐘を鳴らした。

アルバータ大学のAI研究機関Amiiのローザ・エリソープ氏は、日本とカナダが高齢化や生産性向上といった共通課題を抱えていることを指摘した。カナダのAI研究力と、日本の高度なシステム実装能力を組み合わせることで、大きな協働の可能性があると述べた。

一方、法制度や安全性の課題も議論された。日本とカナダはいずれもAI規制の整備途上にあり、法律が技術革新のスピードに追いついていない。また、AIを欺く攻撃手法や、エージェンティック AI(自律型AI)がもたらす新たなリスクも紹介された。講演者らは、安全性を前提にAIを設計する「Safe by Design」の重要性を強調し、カナダの研究機関Milaが進める非営利プロジェクト「LawZero」などの取り組みを紹介した。

故郷のニュースをどう読むか

― カナダのメディア環境を考える ―

1980年代、日本でカナダのニュースを入手するのは容易ではなかった。しかし現在はインターネットによって世界中の情報へアクセスできるようになった。その一方で、どの情報源を選び、何を信頼するかが新たな課題となっている。

カナダの主要メディアには『グローブ・アンド・メール』や『トロント・スター』があるが、それぞれ報道姿勢や重点分野は異なる。また全国各地の新聞を傘下に持つ Postmedia Network は大きな影響力を持つ一方、保守的な編集方針や米国資本との関係に
ついて議論を呼んでいる。

公共放送 CBC と Radio-Canada は、商業メディアでは十分にカバーできない地方や遠隔地を含む全国的な報道網を維持しており、多くの国民から信頼を集めている。

一方で、海外在住のカナダ人や将来の移住希望者に向けた情報発信は十分とは言えず、多くの番組やコンテンツには地域制限が設けられている。情報へのアクセスが飛躍的に向上した現代だからこそ、信頼できるニュースソースの存在と、カナダが世界へ向けて発信する力の重要性が改めて問われている。

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